公開日:2026年8月23日 更新日:2026年9月20日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
「担保も保証人も出せないが、設備を入れ替えたい」「商工会の経営指導員から、マル経があると言われた」。小規模事業者の資金調達で、この制度の名前が出てくる場面は多いのですが、調べ始めると条件が公庫のページと商工会議所のページに分かれて書かれていて、全体像がつかみにくい。マル経融資は、そういう分かりにくさを抱えた制度です。
結論から言えば、マル経融資とは、商工会・商工会議所等の経営指導を受けている小規模事業者が、その長の推薦を受けて日本政策金融公庫から無担保・無保証人で借りられる国の融資制度です。正式名称は小規模事業者経営改善資金といい、限度額は2,000万円、返済期間は設備資金・運転資金とも10年以内(うち据置期間2年以内)です。
私は元銀行員で法人融資の審査に携わり、いまは中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨を中心に融資や経営計画のご相談に乗っています。審査する側にいた立場から言うと、この制度でいちばん誤解されているのは「無担保・無保証人だから通りやすい」という一点です。実際には担保も保証協会の保証もない分、貸す側は全額のリスクを自分で負います。そして審査は商工会議所等と公庫で2回ある——ここが、多くの解説記事で抜け落ちているところです。
この記事では、条件・金利・必要書類といった制度の骨格を公的な一次資料で整理したうえで、審査が2段階になっている理由と、落ちるときに何が起きているのか、そして落ちたあとに何をすればよいのかを説明します。あわせて、山梨県内で自分の窓口が商工会議所なのか商工会なのかを判別する一覧も載せました。
マル経融資とは何か?──推薦で借りる、公庫の無担保融資
マル経融資は、小規模事業者の経営改善に必要な資金を、商工会・商工会議所等の推薦にもとづいて日本政策金融公庫(国民生活事業)が無担保・無保証人で貸し出す制度です。中小企業庁は制度の目的を、次のように説明しています。
商工会、商工会議所等の伴走支援を受けながら小規模事業者が取り組む経営改善に必要な小口資金を、商工会、商工会議所等の推薦に基づき、日本政策金融公庫(国民生活事業本部)から無担保、無保証人で低利に融資することで、小規模事業者の経営改善を支援します。
(中小企業庁「小規模事業者経営改善資金(マル経融資)について」)
ポイントは「伴走支援を受けながら」と「推薦に基づき」の2つです。普通の融資は、事業者が金融機関に直接申し込みます。マル経は、その前に商工会・商工会議所という別の機関が入り、指導し、推薦するかどうかを判断する。この構造が、条件の分かりにくさも、審査が2回ある理由も生んでいます。
なお、沖縄県の事業者については沖縄振興開発金融公庫からの融資となります。
「マル経」と日本政策金融公庫の融資は、何が違うのか
マル経も公庫の融資制度のひとつですから、「別物」ではありません。ただし、公庫が単独で審査する一般の融資(国民生活事業の運転資金・設備資金)とは、次の点が決定的に違います。
| 項目 | マル経融資 | 公庫の一般的な融資 |
| 申込みの入口 | 商工会・商工会議所等(推薦を経て公庫へ) | 公庫の支店へ直接 |
| 担保・保証人 | 無担保・無保証人(保証協会の保証も不要) | 制度・審査により必要になる場合がある |
| 事前の関与 | 原則6か月以上の経営指導が要件 | 不要 |
| 利率 | 特別利率 | 基準利率または特別利率 |
つまりマル経は、「時間をかけて指導を受けてきた」という事実を担保の代わりに置いた制度だと考えると理解しやすくなります。半年の指導が、担保設定や保証人の代替物になっている。そう捉えると、後述する審査の見られ方も腑に落ちるはずです。
誰が使えるのか?──5つの要件と「会員でなくてよい」という事実
利用できるのは、次の要件をすべて満たす小規模事業者です(日本政策金融公庫および日本商工会議所の公表内容)。
| 要件 | 内容 |
| 規模 | 常時使用する従業員が、商業・サービス業(宿泊業および娯楽業を除く)で5人以下、製造業その他で20人以下 |
| 経営指導 | 原則6か月以上、商工会・商工会議所等の経営改善普及事業に基づく経営指導を受けていること |
| 事業歴 | 最近1年以上、商工会・商工会議所等の地区内で事業を行っていること |
| 納税 | 所得税・法人税・事業税および都道府県民税や市町村民税(均等割を含む)を原則としてすべて完納していること |
| 業種 | 商工業者であり、かつ日本公庫(国民生活事業)の非対象業種等でないこと |
そのうえで、商工会議所等の長の推薦を受ける必要があります。
ここで、上位に出てくる解説記事のいくつかが取り違えている点を1つ挙げておきます。商工会・商工会議所に入会していることは、要件ではありません。中小企業庁が公表しているマル経融資の資料には、はっきり「商工会・商工会議所の会員・非会員を問いません」と書かれています。「会費を払っていないから使えない」と最初からあきらめている方に、ときどきお会いします。そこは制度上の壁ではありません。
宿泊業・娯楽業は「5人以下」ではない
従業員数の区分で読み違えが起きやすいのが、宿泊業と娯楽業です。感覚としてはサービス業ですが、制度上は商業・サービス業から除かれているため、「製造業その他」と同じ20人以下の枠で判定します。山梨は宿泊業の多い県ですから、ここは実務上わりと効いてきます。5人を超えているという理由だけで候補から外す前に、自社の業種がどちらの区分かを確認してください。
いくらまで、どんな条件で借りられるのか?
融資条件は全国一律です。中小企業庁および日本政策金融公庫の公表内容を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 融資限度額 | 2,000万円以内 |
| 資金使途 | 経営改善に必要な設備資金・運転資金 |
| 返済期間 | 設備資金・運転資金とも10年以内 |
| 据置期間 | 2年以内 |
| 担保・保証人 | 無担保・無保証人(信用保証協会の保証も不要) |
| 利率 | 特別利率(特別利率F) |
金利は「毎月変動する」と公式に書かれている
金利についてだけは、調べ方に注意が必要です。中小企業庁の資料は利率について「毎月変動しますので、詳しくはお近くの日本政策金融公庫または沖縄振興開発金融公庫の各支店にお尋ねください」と明記しています。
実際、当社が2026年8月23日に確認した時点で、日本政策金融公庫が公表している特別利率Fは年2.70%(令和8年8月3日現在)でした。一方、各地の商工会議所や解説記事のページには、それぞれが更新した時点の数値がそのまま残っています。同じ制度の金利なのに、見るページによって数字が違うのはこのためです。
ですから、ネットで見た利率を前提に返済計画を組まないでください。申込みを検討する段階で、必ず公庫の最新の利率一覧か、窓口で確認した数字を使う。0.5%の違いは、2,000万円・10年なら総返済額で無視できない差になります。返済負担を月次で確かめる手順は「資金繰り表の作り方」で解説しています。
賃上げをしていれば、利率を0.5%下げられる
見落とされやすいのが、併用できる賃上げ貸付利率特例制度です。中小企業庁の資料によれば、次のどちらかに該当する場合、特別利率から0.5%引下げ(貸付後から2年)となります。
- 雇用者給与等支給額が直近の決算期と比較して、2.5%以上増加する見込みがある者
- 雇用者給与等支給額が直近の決算期において、既に2.5%以上増加している者
公庫のページでは「増加する見込みがある方」という書き方が前に出ますが、中小企業庁の資料はすでに増加している場合も対象に含めて書いています。これから賃上げする予定がなくても、直近の決算で人件費が伸びていれば該当する可能性がある、ということです。給与総額が伸びた理由が賃上げなのか残業なのかは、説明の場面で必ず問われますので、内訳を分けて整理しておくとよいと思います。なお公庫は、災害等関連のマル経融資にはこの特例を利用できないとしています。
何に使えるのか?──持続化補助金との組み合わせ
資金使途は「経営改善に必要な資金」で、設備資金・運転資金のどちらにも使えます。抽象的な表現ですが、中小企業庁の資料には具体的な活用例が1つだけ、はっきり書かれています。
「小規模事業者持続化補助金(一般型)」……本補助金の自己負担分やつなぎの融資にご利用いただけます。
(中小企業庁「小規模事業者経営改善資金(マル経融資)について」)
補助金は原則として後払いです。採択されても、事業をやり切って実績報告を出し、確定検査を経てからでないと入金されません。その間の立て替えと、補助対象外になる自己負担分。この2つが、小規模事業者にとって補助金の最大の関門になります。マル経は、そこに充てられると国が明示している数少ない制度です。
ここで1つ、はっきりさせておきたいことがあります。融資の審査と補助金の審査は別物です。融資が見るのは返済可能性、補助金が見るのは政策的な意義と事業の実現性で、基準も判断する主体も違います。「マル経が通ったから補助金も通る」も、その逆もありません。両者に共通するのは計画の数字に根拠があるかを問う目だけです。持続化補助金そのものについては「小規模事業者持続化補助金 山梨」、後払いのつなぎ方は「補助金つなぎ融資とは」にまとめています。
申込みから融資まで、どう進むのか?
中小企業庁が示している流れは4ステップです。
| ステップ | 内容 |
| STEP1 伴走支援 | 会員・非会員に関わらず、相談を受けた小規模事業者に対して商工会・商工会議所等が伴走支援する |
| STEP2 推薦依頼 | 商工会・商工会議所等にマル経融資の推薦を依頼する |
| STEP3 推薦 | 商工会・商工会議所等で受付後、審査を経て日本政策金融公庫へ推薦する |
| STEP4 融資 | 日本政策金融公庫の審査を経て、小規模事業者に融資が行われる |
日本商工会議所は、このSTEP3の中身をもう少し細かく書いています。「商工会議所で受付後、調査・判断、審査会、会長・会頭の認証を経て、日本政策金融公庫へ推薦します」。受け付けたら自動的に推薦が出るわけではなく、審査会と認証という関門があるということです。
「6か月」から逆算すると、動き出す時期が決まる
要件の中でスケジュールを支配しているのは、原則6か月以上という経営指導の期間です。ここを起点に逆算すると、必要な時期から相当さかのぼって動き始めなければならないことが分かります。
| 時期 | やること |
| 資金が必要な時期の8か月前まで | 商工会・商工会議所に相談を始める(指導期間のカウント開始) |
| その間 | 継続して経営指導を受ける。決算書・試算表を整え、資金が必要になる理由を数字で説明できるようにしておく |
| 2か月前ごろ | 推薦を依頼。実地調査・審査会・認証を経て公庫へ推薦 |
| 1か月前ごろ | 公庫の受付・審査・面談 |
| 資金が必要な時期 | 融資実行 |
相談から融資実行まで、余裕をみて8か月前後は見ておくのが安全です。資金が足りなくなってから商工会の扉を叩いても、マル経には間に合いません。私が「使う予定がなくても、早めに窓口と関係を作っておいてください」と申し上げるのは、この一点に尽きます。逆に言えば、いま資金需要が見えていない時期こそ、この制度に対しては最も有利な位置にいるということです。
いますぐ資金が必要で半年待てないという場合は、マル経以外の選択肢から組み立てることになります。相談先の全体像は「融資の相談はどこにする?」、公庫へ直接申し込む場合の審査の見られ方は「日本政策金融公庫の審査」をご覧ください。
必要書類は、窓口ごとに運用が違う
提出書類は制度で全国一律に決まっているわけではなく、推薦する商工会議所・商工会が実務として求めるものが加わります。参考までに、甲府商工会議所が公表している必要書類は次のとおりです。
- 推薦依頼書
- 確定申告書・決算書のコピー(3期分)
- 税の領収書
- 見積書等(設備資金の場合)
- 商業登記簿謄本(法人のみ)
- 試算表(該当者)
- 不動産登記簿謄本(初回申込みで不動産を所有している場合)
- 個人情報利用同意書
決算書が3期分という点に注目してください。一般的な解説記事では「2期分」と書かれていることが多いのですが、実際の窓口ではこうなっています。3期並べれば、傾向が見えます。1期だけの数字なら説明で言い繕えても、3期分の推移は言い訳が効きません。ここは後で述べる審査の話に直結します。書類の詳細は必ず自分の地区の窓口で確認してください。
なぜ審査が2回あるのか?──「通りやすい」の実体
マル経について最もよく検索されている疑問は「審査は通りやすいのか」です。制度の設計を追うと、答えは「関門は1つではなく2つある」になります。
甲府商工会議所が公表している流れが分かりやすいので、そのまま引きます。①書類申し込み → ②実訪調査 → ③会議所審査 → ④公庫審査 → ⑤融資実行。事業者から見れば「商工会議所に相談してマル経を申し込む」という1つの行為ですが、内部では性質の違う審査が2回走っています。
| 商工会議所・商工会の審査 | 日本政策金融公庫の審査 |
| 判断すること | 推薦してよい事業者か | 融資してよいか |
| 材料 | 経営指導の経過・実地調査・決算内容 | 推薦書・申込書類・面談 |
| 関門 | 調査、審査会、会長・会頭の認証 | 審査(結果によっては謝絶) |
公庫はマル経のページの留意事項に、「審査の結果、お客さまのご希望に沿えないことがございます」と一行だけ書いています。当たり前の但し書きに見えますが、推薦が出た案件でも謝絶はあるという意味です。
審査する側から見ると、無担保・無保証人はむしろ厳しい
ここからは、審査していた側の見方をお話しします。マル経には担保がありません。保証人もいません。信用保証協会の保証も付きませんから、返ってこなければ公庫が全額を損失として負う構造です。民間金融機関の保証協会付き融資であれば、代位弁済という受け皿がありますが、マル経にはそれがない。
担保・保証という「回収の担保物」がない融資で、貸す側が代わりに拠り所にできるものは限られています。決算書の数字と、そして半年以上その事業者を見てきた指導機関の推薦です。だから、この制度の「6か月」は形式要件ではなく、担保の代替物として設計されている。私はそう理解しています。
そう考えると、「無担保・無保証人だから通りやすい」という読み方が逆であることが分かります。担保がないからこそ、事業の中身を見る目は細かくなる。プロパー融資と保証協会付き融資で銀行の見方がどう変わるかは「プロパー融資とは」で解説していますが、リスクを誰が負うかで審査の緊張度が変わるのは、どの金融機関でも同じです。
審査で落ちるのは、どんなときか?
公表された不採択事由の一覧はありません。ただ、要件と制度の構造から、つまずきやすい場所はかなり絞り込めます。審査する側にいた経験と、いま支援している立場の両方から、順に挙げます。
1. 要件で先に切れている(審査以前の問題)
いちばん多いのがこれです。納税の完納要件、地区内で1年以上、従業員数、6か月の指導期間。どれか1つが欠けていれば、審査の土俵に上がる前に止まります。特に納税は「原則としてすべて完納」ですから、税目を1つ見落としているだけで引っかかります。甲府商工会議所は法人税・所得税・固定資産税・事業税・市県民税と具体的に挙げていますので、自分の地区の窓口が何を見るかを最初に確かめてください。
2. 資金が必要な理由を、数字で説明できていない
運転資金の申込みで最も多いつまずきがここです。以前、ある小売業の社長さんが、自信のある強気の売上計画を持って来られたことがありました。読んでいるうちに、私は逆の心配をしました。その計画のとおりに利益が出るなら、そもそも運転資金は要らないことになってしまうのです。
金融機関が運転資金で見ているのは、収益性ではなく「なぜ、いま資金が不足するのか」です。先行して人を採る、広告を打つ、仕入を厚くする。そういう支出が入金より先に立つから、一時的に資金が要る。この因果が数字で追えるかどうかが分かれ目になります。強気の計画は経営者ご自身のために別に持っておいて、金融機関に出すのは費用を現実的に積んだ固めの計画にする。これは審査を通すための小細工ではなく、質問に正面から答えるということです。
3. 6か月の指導期間に、何も変わっていない
マル経は創業には使えません。1年以上の事業歴が要件ですから、申し込む方は必ずすでに事業を動かしている状態です。ここが創業融資と決定的に違うところで、創業計画のように「これから何をするか」を精緻に描いても、あまり効きません。すでに実績があるのですから、見られるのは実績のほうです。
以前、支援回数が限られている中で計画書を作った卸売業の方がいました。業界歴が長く、商流は本人がいちばん詳しい。そういう場合、私は計画を作り込むより「この半年で何を変えたか、これから何を変えるか」を1枚で言い切れる状態にすることを優先します。指導を受けてきた期間に打ち手が積み上がっていれば、推薦する側は書くことがあります。逆に、名前だけ登録して半年放置していた場合、推薦する側は書けることがありません。制度の趣旨が「経営改善」である以上、ここは避けて通れないところです。
4. 据置期間を、取れる上限で出してしまう
据置期間は2年以内と定められていますが、これは上限であって、必ず2年取れるという意味ではありません。運転資金で長い据置を求めると、「その間、何で回すのか」を必ず問われます。据置は元金の返済を待ってもらう期間であって、返済が消えるわけではない。据置明けに返済が始まったときの月次資金繰りが持たない計画は、そこで止まります。据置を何か月にするかは、資金繰り表を月次で引いてから決める順番が正しいと思います。
マル経融資の審査に落ちたら、次に何をすればよいか?
最初にやることは、どの段階で止まったのかを確かめることです。マル経の審査は商工会議所・商工会と公庫の2回ありますから、「落ちた」と一口に言っても、止まった場所によって原因も次の手もまったく違います。
| 止まった場所 | 起きていること | 次の一手 |
| 申込みの前(窓口で対象外と言われた) | 要件が欠けている。納税・事業歴・指導期間・従業員数のどれか | 欠けている要件を埋める。税金の未納なら完納してから、指導期間の不足なら指導を続けてから出し直す |
| 商工会議所・商工会の審査(推薦が出なかった) | 推薦書に書ける改善の中身が足りない、または決算内容に懸念がある | 経営指導員に、何が足りなかったかを具体的に聞く。伴走してきた相手なので、最も率直に話を聞ける段階 |
| 公庫の審査(謝絶・減額) | 返済できるかどうかの判断で、希望どおりにならなかった | 減額なのか謝絶なのかを分けて考える(下で説明)。返済原資の計算からやり直す |
断られた理由は、誰に聞けばよいのか
金融機関は一般に、否決の具体的な理由を細かくは説明しません。審査の基準そのものを明かすことになるからです。そこで頼りになるのが、推薦した経営指導員です。
公庫が公表している個人情報保護方針には、国民生活事業で公庫がお客さまの情報を提供する先の一覧があり、「経営改善貸付制度をご相談・お申込みのお客さま」の情報の提供先として「商工会議所、商工会又は都道府県商工会連合会」が挙げられています。マル経は、公庫と推薦した窓口の間で情報がやり取りされる前提で動いている制度です。断られたあとに相談する相手として、まず指導員が適しているのはそのためです。
「信用情報で落ちた」と決めつける前に
審査落ちの原因として「信用情報に問題があった」を真っ先に挙げる解説が多く、なかには「公庫は必ず信用情報機関に照会する」と断定しているものもあります。ただ、同じ公庫の提供先一覧を見ると、個人信用情報機関が提供先に挙がっている欄(ここから、信用情報機関への照会と登録についての同意事項の資料がリンクされています)では、経営改善貸付に「小規模事業者経営発達支援資金に限る」という限定がついていて、マル経(小規模事業者経営改善資金)の名前はこの欄にありません。少なくとも公表資料からは、「マル経は必ず信用情報で見られる」とまでは読めません。もっとも、同意を求められる事項は申込みの種類によって違います。自分が署名する申込書の同意条項で確かめるのが確実です。
だからといって、返済の実績を見られないわけではありません。既存の借入の残高がどう推移しているか、返済が滞っていないかは、決算書と面談で確認されます。原因を信用情報に求めて待つより、先に数字の側を点検するほうが、次の申込みにつながります。
減額は「否決」ではない──希望額と返済余力のずれ
公庫の審査の結果は、通るか落ちるかの二択とは限りません。希望額より少ない金額での回答、つまり減額もあります。減額は、事業そのものは認めたうえで、返せる額に合わせて調整されたと読むのが自然です。
私が融資のご相談で最初に使う目安があります。営業利益に減価償却費を足した「簡易キャッシュフロー」を出し、借入の元金返済がその5割程度に収まるかを見る、というものです。9割を占めるようだと、追加の借入はかなり厳しくなります。公庫の基準ではなく、審査する側の見方を借りた私の目安です。
たとえば、営業利益220万円・減価償却費80万円の会社なら、簡易キャッシュフローは年300万円です。既存の借入の返済が年90万円あるところに、マル経で1,000万円を7年返済で借りると、元金返済は年約143万円増えて、合計は約233万円。簡易キャッシュフローの約78%になります。同じ7年で500万円なら年約71万円増えて合計約161万円、約54%です。個人事業主の場合は、営業利益に生活費が含まれていないので、簡易キャッシュフローから生活費を引いた残りで同じ計算をしてください。
このずれが、減額の正体であることが少なくありません。希望額が返済余力を超えているなら、否決されてから出し直すより、最初から資金使途を絞った金額で申し込むほうが結果は早く出ます。運転資金なら、資金繰り表を月次で引いて不足額を確定させてから金額を決めてください。作り方は「資金繰り表の作り方」で解説しています。
出し直すまでに、どれだけ空ければよいのか
「否決されたら6か月は再申込みできない」と書いている解説もありますが、公庫・日本商工会議所・甲府商工会議所の公表ページを2026年9月20日に確認した範囲では、否決後の再申込みまでの期間を定めた記載は見当たりません。
期間の決まりより大事なのは、前回から何が変わったかです。断られた原因がそのままなら、何か月空けても結果は同じになります。設備投資の相談で借入が事業規模に対して重いとき、私は「無理です」で終わらせず、埋める手を3つに分けて宿題にします。
- 売上の根拠を具体にする。取引先名・数量・単価まで下ろす。「頑張る」は根拠になりません
- 自己資金で賄える部分を確定させる。手元の資産を売って充てる分も含めて、金額を決める
- 借入額そのものを圧縮する。設備の価格交渉や、投資の範囲を絞る。3つの中でいちばん早く効くのがこれです
このどれかが動いたことを、試算表や見積書で示せるようになった時点が、出し直すタイミングだと考えています。再申込みの時期と中身は、自分の判断で決める前に、推薦してくれる指導員とすり合わせてください。
待てないときの資金の手当ては、どの順番で考えるか
出し直しまで資金が持たない場合は、ほかの手段を考えることになります。ただし順番があります。
- いつ、いくら足りないかを確定させる:資金繰り表で不足の月と金額を出す。ここが曖昧なまま次の借入先を探すと、同じ理由でまた止まります
- 信用保証協会の保証付き融資(制度融資)を検討する:自治体の制度融資は、金融機関と信用保証協会が関わる別の審査です(「制度融資とは」「信用保証協会の審査」)。ただし、公庫で返済余力を理由に断られたのなら、保証協会でも同じ点は問われます
- 小規模企業共済に加入しているなら、契約者貸付を確認する:納付した掛金から算定される限度額の範囲で、事業資金を借りられる制度です(「小規模企業共済の貸付制度」)
- 手数料や金利の高い手段は最後に回す:売掛金を売るファクタリングや、金利の高い事業者向けローンは早く資金になりますが、マル経が「経営改善」のための資金だったことを思い出してください。コストが改善の効果を食ってしまえば、元も子もありません
資金繰りがすでに差し迫っている場合は、借入の前に打てる手から並べ直したほうがよいこともあります。「資金繰りが厳しいときにやるべきこと」もあわせてご覧ください。公庫の他の融資で断られたケースの整理は「日本政策金融公庫の審査に落ちる理由と対策」にまとめています。
ここまでを読んで「うちは要件を満たしていそうだが、数字の説明に自信がない」「一度断られたが、どこを直せばよいか分からない」と感じられた方へ。当社は融資を審査していた側の視点で、決算書と資金繰りから「なぜ資金が必要か」を説明できる形に整理するお手伝いをしています。商工会・商工会議所での指導と並行して使っていただける内容です。初回のご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
デメリットと注意点は何か?
条件がよい制度ですが、向かない場面もはっきりしています。
| 注意点 | 内容 |
| 創業には使えない | 「最近1年以上、地区内で事業を行っていること」が要件のため、これから開業する方は対象外。創業時は公庫の創業融資などを検討する |
| 時間がかかる | 原則6か月以上の経営指導が前提。急ぎの資金需要には構造的に間に合わない |
| 審査が2段階 | 推薦が出ても公庫段階で謝絶されることがある |
| 規模の上限がある | 従業員数を超えて成長した事業者は対象から外れる |
| 使途は経営改善に必要な資金 | 事業と関係のない支出には使えない |
創業予定の方は「日本政策金融公庫の創業融資」を、資金繰りが厳しく待てない状況であれば「資金繰りが厳しいときにやるべきこと」を先にご覧いただくほうが、順番として合っていると思います。
山梨県では、どこが窓口になるのか?
マル経は、自社の所在地を管轄する商工会議所または商工会が窓口です。ここを取り違えると、そもそも相談先が違うことになります。市だから商工会議所、町村だから商工会、という決まりではありません。
山梨県内で商工会議所が置かれているのは、甲府市(甲府商工会議所)と富士吉田市(富士吉田商工会議所)です。それ以外の市町村は商工会が窓口になります。山梨県商工会連合会が公表している県内の商工会は、2026年8月23日時点で次の23会です。
| 地域 | 商工会 |
| 市部 | 都留市商工会/山梨市商工会/大月市商工会/韮崎市商工会/南アルプス市商工会/北杜市商工会/甲斐市商工会/笛吹市商工会/上野原市商工会/甲州市商工会/中央市商工会 |
| 峡南・峡北 | 市川三郷町商工会/富士川町商工会/身延町商工会/南部町商工会/早川町商工会/昭和町商工会 |
| 富士・東部 | 南都留中部商工会/河口湖商工会/西桂町商工会/道志村商工会/小菅村商工会/丹波山村商工会 |
都留市のように、市であっても商工会が窓口になる地域があります。思い込みで電話をかける前に、この一覧で確認してください。該当が見当たらない場合は、山梨県商工会連合会または最寄りの商工会にお尋ねいただくのが確実です。
公的窓口と、当社のような民間支援の使い分け
正直に申し上げると、マル経を使うだけであれば、商工会・商工会議所の経営指導員と公庫の窓口で完結します。無料ですし、継続して見てもらえます。私が最初にご案内するのも、この窓口です。
公的窓口が構造的に手が回りにくいのは、課題が表に出る前の段階と、個社ごとの深い作り込みです。決算書の3期推移から自社の立ち位置を読む、資金が必要な理由を月次の資金繰りで示す、据置期間を何か月に設定すべきか試算する。このあたりを一緒に詰めたいということであれば、当社のような民間の出番があります。順番としては、まず商工会・商工会議所で指導を受け始める。並行して数字を整える。これが、半年を無駄にしない進め方です。当社の支援内容は「融資・資金調達の支援サービス」をご覧ください。
マル経融資についてよくある質問
マル経融資に自己資金の要件はありますか?
公表されている要件(規模・経営指導・事業歴・納税・業種)に、自己資金の額を定めた条件はありません。創業融資のように「自己資金がいくら必要」という基準は置かれていない制度です。ただし要件がないことと、審査で自己資金や手元資金を見ないことは別です。手元の現預金がどれだけあるかは、返済余力を判断する材料として当然に見られます。
従業員が1人もいない個人事業主でも対象になりますか?
従業員数は「商業・サービス業で5人以下、製造業その他で20人以下」という上限の要件ですので、従業員が0人でも要件は満たします。一人で営んでいる事業者が使えない制度ではありません。ほかの要件(1年以上の事業歴、原則6か月以上の経営指導、納税の完納、商工業者であること)を満たしているかを確認してください。
赤字決算でも申し込めますか?
要件に「黒字であること」は含まれていないため、申込み自体は可能です。ただし審査は別で、赤字の内容と原因の説明が求められます。一過性の要因なのか、構造的なものなのか。私の経験では、赤字そのものより「原因を経営者が把握できているか」が判断を分けます。3期分の決算書を並べて説明する準備をしておいてください。
すでにある借入の借り換えに使えますか?
公庫・中小企業庁・日本商工会議所の公表資料には、借換えの可否を明記した記載が見当たりません。制度上の資金使途は「経営改善に必要な設備資金・運転資金」とされています。可否や条件は個別の判断になりますので、断定した情報を鵜呑みにせず、商工会・商工会議所の窓口か公庫の支店で必ず確認してください。
商工会議所と商工会で、条件は変わりますか?
マル経は国の制度ですので、限度額・返済期間・利率・担保保証人といった融資条件は同じです。変わるのは推薦にあたっての運用面で、提出書類の種類や部数、審査会の開催頻度、実地調査の進め方などは窓口ごとに異なります。たとえば決算書を3期分求める窓口もあります。制度の条件は公庫と中小企業庁の公表内容で、手続きの実務は自分の地区の窓口で、と使い分けて確認するのが確実です。
マル経融資は、半年という時間を先に払うことで、担保も保証人もなしに借りられる制度です。裏を返せば、その半年をどう使ったかが、そのまま推薦と審査に出ます。当社は融資を審査していた側にいた元銀行員として、決算書と資金繰りから「なぜ、いくら必要なのか」を組み立て、商工会・商工会議所での指導と並走する形でご支援しています。まずは融資・資金調達の支援サービスをご覧いただき、無料相談はこちら(お問い合わせフォーム)からお気軽にご連絡ください。
監修:池田哲郎。八十二銀行で法人融資の審査・経営改善支援に従事し、事業計画や決算を「審査する側」として100件超を見てきた経験を持つ。現在は中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、山梨県で融資・補助金・経営計画の支援を行う。本記事の制度情報は、日本政策金融公庫「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」および「制度概要|小規模事業者経営改善資金(マル経融資)」「融資金利」、中小企業庁「小規模事業者経営改善資金(マル経融資)について」(令和8年4月8日時点版)、日本商工会議所「マル経融資」、甲府商工会議所「マル経資金」、山梨県商工会連合会「商工会一覧」の公表内容(2026年8月23日確認)に基づきます。審査に落ちたあとの節の、公庫による情報の提供先は日本政策金融公庫「個人情報保護方針」および「個人信用情報機関及びその加盟事業者による個人情報の利用・提供」(2026年9月20日確認)によります。利率は毎月変動し、必要書類や手続きの運用は窓口ごとに異なります。申込みの前に、必ず公庫および自社の地区を担当する商工会・商工会議所の最新の公式情報をご確認ください。