補助金

補助金の財産処分とは|設備の売却・廃棄に要る承認申請と返還額の計算【2026年】

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池田計画合同会社

公開日:2026年9月24日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)

「補助金で入れた機械、使わなくなったので売ろうと思うんですが」。この相談が来るのは、たいてい売却先が決まったあとです。ときには、もう引き取られたあとのこともあります。そこから戻せることと戻せないことがはっきり分かれるので、私はまず「いつ買ったものですか」と聞きます。

補助金の財産処分とは、補助金で取得した単価50万円(税抜)以上の設備などを、処分制限期間のあいだに目的外で使う・売る・交換する・貸す・担保に入れる・捨てることをいいます。いずれも事前に事務局の承認が必要です。

やっかいなのは、この義務が補助事業の完了後も何年も続くことと、捨てるだけ、社内で別の用途に回すだけ、といった「誰にも渡していない行為」まで対象に入ることです。この記事では、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下、補助金適正化法)と、ものづくり補助金の交付規程・補助事業の手引きの原文にあたって、どこまでが処分にあたり、いくら返すことになるのかを整理します。


補助金の財産処分とは何を指すのか

根拠は補助金適正化法の第22条です。条文はこうなっています。

補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。(補助金適正化法 第22条)

読んでいただくと分かるとおり、法律が名前を挙げているのは「目的外使用・譲渡・交換・貸付け・担保」の5つで、「廃棄」は条文の列挙に入っていません。では捨てるのは自由かというと、そうではありません。経済産業省が承認の基準として定めた「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」(平成16・06・10会課第5号)が、財産処分の定義を7つに広げています。

類型定義(経済産業省の取扱いより)
転用所有者の変更を伴わない目的外使用
譲渡所有者の変更(有償・無償を問わない)
交換他人の所有する他の財産との交換
貸付け所有者の変更を伴わない使用者の変更
担保に供する処分抵当権その他の担保権の設定
取壊し施設(土地を含む)の使用を止めて取り壊すこと
廃棄設備の使用を止めて廃棄処分すること

個別の補助金の交付規程も、これと同じ範囲で書かれています。ものづくり補助金の交付規程は第20条第3項で、処分を「補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等」と定義しています(ものづくり補助金 交付規程・補助事業の手引き、23次締切版・令和8年8月7日掲載)。

逆に、財産処分に当たらないと経済産業省の取扱いが明記している行為もあります。業務時間外や休日に一時的に転用する場合などの「極めて軽微」な転用、補助目的の事業を遂行するために必要な機能の維持・回復・強化を図る改造、技術開発補助金で得た成果を商品化するために必要な技術開発に使う場合の3つです。修理や更新のための改造まで承認が要るわけではない、ということになります。

「社内で別の用途に回すだけ」がいちばん見落とされる

相談で圧倒的に多いのは、売却でも廃棄でもなく転用です。補助事業で導入した機械の稼働率が落ちてきたので、空いている時間に既存事業の加工にも使う。所有者は変わらず、社外にも出ていない。だから手続きが必要だとは思わない、という流れです。

この点について、事業再構築補助金の事務局は公式のよくある質問でこう答えています。「補助事業により取得した資産は、原則として専ら補助事業に使用される必要があります。既存事業等、補助事業以外で用いた場合、目的外使用と判断し、残存簿価相当額等を国庫に納付いただく必要がございます」(事業再構築補助金 財産処分、2026年5月11日更新)。同事務局はさらに、「専ら補助事業に使用」とは事業計画書に記載した事業にのみ使うことを指す、と補足しています。


処分制限がかかるのはどの財産か、なぜ50万円が境目なのか

「50万円以上」という基準は、実はどの法律にも書かれていません。補助金適正化法施行令の第13条が定めているのは、不動産、船舶・航空機など、それらの従物、そして「機械及び重要な器具で、各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定めるもの」という書き方です。金額の線引きは、制度ごとの交付規程に委ねられています。

その委ねられた先で、経済産業省系の中小企業向け補助金はおおむね50万円で揃えています。ものづくり補助金の交付規程第21条第1項は「取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜き)以上の機械、器具、備品及びその他の財産」、事業再構築補助金も「単価50万円(税抜き)以上の建物、機械器具、備品及びその他財産」としています。揃ってはいますが、揃っていることに根拠があるわけではないので、ご自身が採択された制度の交付規程で確認してください。

50万円未満なら自由に処分できるのか

できません。ここは競合記事でもよく抜け落ちる論点です。ものづくり補助金の交付規程は、処分制限財産を定めた第21条の手前、第20条第2項で別の義務を課しています。

補助事業者は、補助事業期間内に取得財産等があるときは、第21条で処分を承認された財産を除き、補助事業の完了の日の属する年度の終了後5年間管理しなければならない。(ものづくり補助金 交付規程 第20条第2項)

金額の条件が付いていません。つまり50万円未満の取得財産にも、完了年度の翌年度から5年間の管理義務があるということです。50万円以上の財産には、これに加えて第21条の処分制限がかかる、という二階建ての構造になっています。

管理の実務は実績報告の段階から始まっています。様式第7の取得財産等管理台帳を実績報告書に添付し、補助対象物件には「もの補助」の表示を貼り、納品前後の写真を残す。このあたりは記事「補助金の実績報告とは」で整理しています。台帳をきちんと作っていないと、数年後に財産処分の申請をするときに残存簿価を出せず、そこで止まります。


処分制限期間は何年か、「10年たてば自由」は本当か

検索では「補助金適正化法 10年 財産処分」という語がよく引かれます。この10年がどこから来ているのかを、原文をたどって確かめました。

出発点は施行令第14条第1項第2号です。処分制限が適用されなくなる場合として、「補助金等の交付の目的及び当該財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長又は補助実施法人の代表者が定める期間を経過した場合」と書かれています。法律も政令も、年数そのものは定めていません。

これを受けて経済産業省が出しているのが、令和5年4月26日の経済産業省告示第64号「補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分を制限する期間」です。補助金の名称ごと、財産の種類ごとに年数を並べた別表になっていて、たとえば鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用建物は50年、金属加工機械製造設備は9年、電気機械器具製造業用設備は7年、ソフトウェア(複写して販売するための原本以外)は5年といった具合に、実態としては減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)の法定耐用年数が入っています。

ものづくり補助金の交付規程第21条第2項は、処分制限期間について「減価償却資産の耐用年数等に関する省令及び経済産業大臣が定める期間を準用する」としています。10年という一律の年数は、どこにも出てきません。50年の財産もあれば、5年に満たない財産もあります。

では10年はどこから来たのか

先ほどの経済産業省の取扱い(平成16・06・10会課第5号)に出てきます。ただし、出てくる文脈が問題です。

この取扱いの5.(1)①aは、「使用開始の日からの経過年数が10年以上である財産処分(有償譲渡及び有償貸付を除く)」について、承認申請の代わりに報告書の提出で承認を受けたものとみなし、国庫納付を求めないとしています。ここだけ切り取ると「10年たてば返さなくていい」に見えます。しかし条文の主語は「地方公共団体が行う財産処分であって」です。市役所や県が持っている施設の話であって、中小企業の設備の話ではありません。

地方公共団体以外の者、つまり民間の事業者については5.(2)②cに別の定めがあります。経過年数が10年以上であることに加えて、(ア)国または地方公共団体の補助事業・委託事業その他公益性の高い事業として大臣等が個別に認めるものに使用するための財産処分(有償譲渡・有償貸付を除く)、または(イ)国または地方公共団体に対して行う無償譲渡・無償貸付、のいずれかに当たる場合に限り、国庫納付条件を付さないことができる、という書き方です。

整理すると、中小企業が自社の都合で設備を売る場面には、10年ルールは届きません。判断に使うべき年数は告示第64号と耐用年数省令で決まる処分制限期間のほうで、その期間を過ぎていれば承認申請そのものが不要になります。10年という数字を覚えるより、自社の機械の法定耐用年数を固定資産台帳で確認するほうが実務的です。


売却・廃棄・転用したいとき、手続きはどう進むのか

順番はどの制度もほぼ同じで、申請、承認、処分、報告、納付の5段階です。動かせないのは処分を実行する前に承認をもらうことで、ここだけは後戻りができません。ものづくり補助金と事業再構築補助金の様式を並べると、こうなります。

段階ものづくり補助金事業再構築補助金
①申請(処分の前)様式第10-1 財産処分承認申請書様式第12-1 財産処分承認申請書
②承認様式第10-2 取得財産処分承認通知書様式第12-2 財産処分承認通知書
③処分承認された内容の範囲で売却・廃棄・転用等を実行
④報告様式第10-3 財産処分報告書様式第12-3 財産処分報告書
⑤納付様式第10-4 財産処分納付通知書様式第12-5 財産処分に伴う納付について

事業再構築補助金では手続きが事業化状況報告システム上で完結し、印刷・押印・郵送は不要です。納付は通知日から30日以内の一括払いと決まっています。ものづくり補助金も事業化状況報告システムからの提出です。

事務局にどう聞くか

処分制限財産の扱いは、公募要領を読んでも書いていない領域が必ず残ります。設置場所を工場内で移すのはどうか、リース契約に切り替えたいがどうか、といった質問です。そういうときに事務局へ電話することになりますが、聞き方で結論が変わります。

私が相談の場でよく申し上げるのは、「これはダメですか」と聞かないでください、ということです。ダメそうですかと尋ねられた担当者は、判断の材料がない以上、安全側に倒れます。そうではなく、この設備を今後どう使うつもりで、それが補助事業の目的にどうつながるのかを先に説明したうえで、この扱いは財産処分に当たりますかと聞く。補助金の対象経費の照会でも同じで、効果を説明してから可否を尋ねると、返ってくる答えの精度が変わります。

正直に申し上げると、出してみないと分からない部分は残ります。100パーセントとは言えない。ただ、承認前に動いてしまった場合と、聞いたうえで動いた場合とでは、あとの重さがまったく違います。


返還額(国庫納付額)はいくらになるのか

「返す」と聞くと補助金の全額を返すイメージを持たれますが、そうではありません。ものづくり補助金の補助事業の手引きは、納付金額を次の算式で示しています。

D = A × C / B
A:有償譲渡・有償貸付の場合は譲渡額または貸付額(ただし残存簿価相当額または鑑定評価額に比して著しく低価で、その理由を合理的に説明できないときは残存簿価相当額または鑑定評価額)。目的外使用・無償譲渡・無償貸付等の場合は残存簿価相当額
B:当該処分財産に係った補助対象経費
C:Bに対する当該補助金の確定額
D:補助金の納付金額(円未満切捨て)

C/Bは実質的に補助率です。経済産業省の取扱いも4.(1)(2)で同じ考え方を採っており、有償譲渡・有償貸付なら譲渡額等に補助率を乗じた額、転用・無償譲渡・無償貸付・交換・取壊し・廃棄なら残存簿価相当額に補助率を乗じた額としています。いずれも、処分制限財産に係る補助金額が上限です。

数字を入れてみる

実際にいくら残るのかを見たほうが早いので、仮の数字で置いてみます。取得価額1,200万円(税抜)の機械装置を、補助対象経費1,200万円・補助金確定額800万円(補助率3分の2)で導入し、法定耐用年数10年、定率法の償却率0.200、期首に取得して丸3年で処分した、という前提です。

年期首帳簿価額減価償却費期末帳簿価額
1年目12,000,000円2,400,000円9,600,000円
2年目9,600,000円1,920,000円7,680,000円
3年目7,680,000円1,536,000円6,144,000円

3年後の残存簿価相当額は614万4,000円です。ここから2つの場合に分かれます。

処分の仕方A納付額 D=A×C/B手元に残るもの
700万円で売却7,000,000円4,666,666円売却代金700万円-納付466万円=233万円
老朽化で廃棄6,144,000円4,096,000円現金の入りはゼロ、支出だけ410万円

700万円で売れても手元には233万円しか残らない。捨てるだけなら、入ってくるお金がないまま410万円を納めることになる。この2行を見ていただくと、なぜ「処分する前に相談してください」と申し上げるのかが伝わると思います。廃棄のほうが重いのは、処分の対価がないのに納付額は残存簿価で計算されるからです。

残存簿価相当額の計算には、手引きが定めた決まりごとがいくつかあります。法人は原則として定率法の償却率を使い、圧縮記帳などの独自の会計処理は考慮しません。個人事業主は定額法が一般的なので定額法の償却率を使います。月数は取得年月日と処分年月日のあいだの足掛け月数で、月未満は切上げ、事業年度をまたぐ場合は事業年度ごとに1か月未満を1か月として処理します。圧縮記帳を適用していた設備でも取得価額ベースで計算されるので、帳簿上の簿価と納付計算上の残存簿価相当額はずれます。圧縮記帳そのものの仕組みは「補助金の圧縮記帳とは」にまとめています。


返還が免除される場合はあるのか

あります。ただし、条件は狭く、読み違えると使えません。ものづくり補助金の交付規程から、条文の範囲がはっきりしている2つを挙げます。

成果活用型の転用(交付規程第21条第6項)

補助事業の成果を活用して実施する事業に使うために取得財産を転用する場合、様式第11-1で事前に申請して承認を受ければ、納付が免除されます。補助事業の手引きはこれを「成果活用型生産転用」と呼んでいます。

ここで大事なのは範囲です。条文は機械・設備に限るとし、転用を「財産の所有者の変更を伴わない目的外使用」と定義しています。つまりこの免除は、あくまで自社が持ち続けたまま用途を変える話であって、売ってもよいという意味ではありません。補助事業の成果と無関係な既存事業に回すケースも、この6項ではなく通常の目的外使用として扱われます。

災害・火災・危険な状態による取壊しと廃棄(同第21条第7項)

取得財産が災害により使用できなくなった場合、または立地上・構造上危険な状態にある場合の取壊し・廃棄は、様式第11-2の財産処分報告書を提出することで承認を受けたものとみなされ、納付も免除されます。事業再構築補助金にも同じ扱いがあり(様式第12-4)、こちらは補助事業者の責めに帰することができない事由による場合に限る、と明記されています。罹災証明書等の提出を求められることがあります。

なお経済産業省の取扱いには、これ以外にも国庫納付条件を付さないことができる区分が並んでいます。たとえば5.(2)②bは、社会経済情勢の変化等により処分制限財産を維持する意義が乏しくなった場合や、資金繰りの悪化等により維持管理が困難になったと認められる場合の取壊し等を挙げています。ただしこれは経済産業大臣等が承認をする際の基準であって、事務局を通す間接補助の制度で同じ運用がされるかどうかは、この文書からは確認できません。該当しそうな事情があるなら、期待値を先に決めずに事務局へ事情を説明して確認するのが筋です。


事業承継・法人成り・M&Aのとき、補助金の設備はどうなるのか

ここが、私のところに来る相談でいちばん深刻になる場面です。設備そのものを動かすつもりはなくても、会社や事業主が変わると、それ自体が財産の譲渡にあたる可能性があります。

ものづくり補助金は、この場面のために事業承継という別の手続きを用意しています。事務局が公表している「事業主体が変わる場合の注意事項」(2026年1月版)を読むと、採択された事業者から法人番号が異なる法人、他の個人事業主、あるいは法人成りによって補助事業の実施主体を変更したい場合は、事業承継申請を行って承認を得る必要があるとされています。そして、認められない例として次の3つが挙げられています。

  • 実際に承継をした後に事務局へ申請を行う場合(事後申請)
  • 交付決定前(交付申請中を含む)に承継をする場合
  • 事業譲渡(有償・無償を問わず)に当たると判断される場合

3つ目には注記が付いていて、財産を譲渡する場合は財産処分をすることとなっています、と書かれています。事業譲渡のかたちを取ると、承継として引き継ぐ道は閉じ、財産処分として納付する道に切り替わるということです。承継が否認された場合も、事務局から連絡があって財産処分の手続きに入る、と同じ文書に書かれています。

さらに、承継が認められた場合も負担は消えません。承継者は被承継者の権利義務を一切引き継ぐため、事業化状況報告が残っていれば、給与支給総額や事業場内最低賃金の増加目標を含む事業計画を縮小することなく改めて策定して引き継ぎます。基本要件が未達になった場合の補助金返還義務を負うのは承継者です。被承継者が採択時に経営革新計画や事業継続力強化計画で加点を受けていたなら、承継者も事業完了までにその承認を取得する必要があります。

法人番号が変わらない組織変更(合同会社から株式会社へ、など)や社名変更は事業承継ではなく「社名等の変更」として届け出る扱いで、株主の変更も事務局への連絡事項とされています。このあたりの線引きは、事業承継計画書の書き方を検討する段階で一度は確認しておいたほうがよい項目です。

許認可と同じ構造だと考えると分かりやすい

先日、宿泊業を親族に引き継ぎたいという相談を受けました。相談者が最初に聞いてきたのは資産でも税金でもなく、許認可はどうなるのかという点でした。調べてみると、旅館業の許可は譲渡の前に譲受人が承継の承認を申請して知事の承認を受ける仕組みで、承認前に代表を変えてしまうと事業承継ではなく新規の許可の取り直しになる可能性がありました。結論として、切替日を1年3か月先に置いて、そこから逆算して段取りを組むことにしました。

補助金の事業承継も、構造はまったく同じです。先に動いて後から届け出る、という順序が通らない。事後申請は承認されない、と事務局の文書に明記されています。だから相続や引退の話が出た時点で、補助金で買った設備が処分制限期間内にあるかどうかを、財産の一覧に必ず入れておいてください。


承認を受けずに処分してしまったら、どうなるのか

ここは正直にお伝えします。事業再構築補助金の事務局は「事前の承認を得ずに財産を処分してしまった場合は交付決定を取り消される場合があります」と公表しています。ものづくり補助金の手引きも「事前に事務局に申請を行って、承認を得なければ処分することができません」と書いています。

交付決定が取り消されれば、補助金適正化法第18条により受け取った補助金の返還命令の対象になり、同法第19条の加算金が付く場合もあります。処分した財産の分だけでは済まない可能性がある、という点が納付との決定的な違いです。

ですから、もうやってしまった場合にすべきことは1つです。放置しないで事務局に連絡してください。後で発覚すると芋づる式に大変なことになります。事業再構築補助金は承認前に処分された場合の問い合わせ窓口を公式ページに用意していますし、ものづくり補助金も災害等で使用できなくなった場合はまず事務局に連絡してほしいと手引きに書いています。自分で判断して黙っているのが、いちばん傷が深くなる選択です。

買う前に効いてくる話でもある

処分制限は、設備を買ったあとの話に見えて、実は申請の入口で効いてきます。以前、創業前の方から、取引先が資金を出してくれるので取引先の名義で補助金を申請してもらい、後から自分に名義を移したい、という相談を受けたことがあります。結論としては成り立ちません。補助金で買った物は処分制限期間のあいだ譲れないので、数年以内の名義変更が組めないからです。

同じ相談では、設備の置き場所の話も出ました。自分の持ち物でない場所に置くなら所有者との賃貸借契約書が要り、それに加えてその設備の耐用年数のあいだそこに置いてよいという貸主の承諾書を求められました。2年更新の賃貸借では期間が足りないからです。設備補助金の相談では、金額より先に「どこに置くか」「誰の名義で買うか」を聞くようにしているのは、この2つが後から直せないからです。ものづくり補助金のような設備投資型の制度を検討している段階の方は、申請書を書き始める前に確認しておいてください。


山梨で補助金の設備の扱いに迷ったら

財産処分の判断には、制度の読み方と、決算書・固定資産台帳の読み方の両方が要ります。残存簿価相当額を出すには取得年月日と償却率が要り、売るべきか使い続けるべきかの判断には、納付額を引いたあとに資金繰りがどう変わるかの見通しが要るからです。

私は元銀行員の中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、申請の段階だけでなく、交付決定後の実績報告・事業化状況報告・財産処分の相談までお引き受けしています。支援した案件は採択実績のページで制度名とテーマを公開しています。制度選びの段階からであれば補助金支援サービスをご覧ください。処分を決めてしまう前の段階であれば、打てる手はまだ残っています。初回のご相談は無料ですので、設備を動かす前にお声がけください。

なお、制度の運用そのものについては各補助金の事務局が正確です。地域の窓口で相談したい場合は、お住まいの市町村を管轄する商工会議所または商工会が第一候補になります。

※本記事の制度の記載は2026年9月24日時点で確認した法令・告示・交付規程・補助事業の手引き等に基づきます。金額基準・処分制限期間・様式番号・納付額の算定方法は制度ごと、公募回ごとに異なり、改正もあります。実際の手続きにあたっては、必ずご自身が採択された公募回の交付規程・補助事業の手引きの原文と事務局の案内をご確認ください。


よくある質問

補助金で買った機械を担保に入れて融資を受けることはできますか?

できる場合があります。担保権の設定も財産処分にあたるため事前の承認が必要ですが、ものづくり補助金の補助事業の手引きは、その機械装置を取得するための資金調達、または資金繰りの悪化等により補助事業を遂行するために必要な資金調達をする場合に限り、担保権の実行時に納付することを条件に認められる、としています。申請のタイミングは3通りあり、交付申請時なら様式第1の資金調達内訳欄に、補助事業期間中なら様式第3-1の変更内容欄に、事業終了後なら様式第10-1に理由を明記します。金融機関との話が具体化する前に事務局へ確認してください。

設備をリース契約に切り替えたい場合はどうなりますか?

所有者が変わらずに使用者が変わればリースは「貸付け」、所有権ごと移して借り戻す形なら「譲渡」に当たります。いずれも処分制限期間内であれば事前の承認が必要で、有償であれば貸付額または譲渡額を基礎に納付額が算定されます。セール・アンド・リースバックで資金を作る構想は、承認と納付を織り込むと手取りが想定より小さくなることが多いので、条件を詰める前に試算しておくことをおすすめします。

補助事業期間の終了後に会社が中小企業者でなくなった場合はどうなりますか?

ものづくり補助金の補助事業の手引きは、補助事業期間終了後に補助対象者に該当しなくなった場合(大企業化およびみなし大企業化を除く)は、処分制限財産について財産処分となり、残存簿価相当額で補助金の返納が必要になる、としています。資本構成の変更や組織再編を検討する際は、処分制限期間内の設備があるかどうかを先に確認してください。

処分制限期間が過ぎたら、書類や台帳も処分してよいですか?

処分制限期間が過ぎれば財産処分の承認申請は不要になりますが、書類の保存義務は別に走っています。ものづくり補助金では、経理の証拠書類その他の関係書類を補助事業終了後5年間、適切に整備・保存することが求められています。また事業化状況報告など、処分制限とは別の報告義務が残っている場合もあります。取得財産等管理台帳は、処分制限期間と保存義務の両方が終わるまで残してください。

補助金で取得した財産を、同じ社内の別の工場へ移設するのは財産処分ですか?

所有者も使用者も変わらず、補助事業の用途のまま設置場所だけを移すのであれば、経済産業省の取扱いが定める7類型のいずれにも形式的には当たりません。ただし、交付申請時に設置場所を特定して届け出ており、設置場所の変更を計画変更の承認事項としている制度があります。財産処分ではなく計画変更の手続きになる可能性が高いので、移設を決める前に事務局へ確認してください。

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