公開日:2026年8月22日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)
パートナーシップ構築宣言とは、取引先との共存共栄と「振興基準」の遵守を代表権のある者の名前で宣言し、国の依頼を受けた団体が運営するポータルサイトに公表する取組です。業種・規模を問わず宣言でき、一部の補助金では加点になります。
補助金の相談をお受けしていると、加点項目の話になったところで「パートナーシップ構築宣言って、うちみたいな会社でも出せるんですか」と聞かれます。出せます。ただ、そこから先で困る方が多い。登録した日にポータルへ載るわけではないので、締切ぎりぎりに思い立つと加点が間に合わないのです。
しかも、ひな形は2026年1月1日に改正されました。下請法と下請中小企業振興法が改正され、法律の名前そのものが変わったためです。すでに宣言している会社にとっては更新の話になりますし、これから宣言する会社にとっては「どのひな形を使うか」の話になります。この記事では、ひな形と公表要領の原文で確認できたことを軸に、登録から加点までの日程の組み方までを整理します。
パートナーシップ構築宣言とは何を約束する制度か
宣言の中身は、大きく二つです。ひな形の項番がそのまま二つの柱になっています。
- 1.サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携。直接の取引先だけでなく、その先の取引先にも働きかけて、全体の付加価値向上に取り組む
- 2.「振興基準」の遵守。受託中小企業振興法に基づく振興基準を守り、パートナーシップ構築の妨げになる取引慣行や商慣行の是正に取り組む
1は理念に近い話ですが、2は違います。振興基準には、買いたたきをしない、型の無償保管を要請しない、受領日から60日以内に現金で代金を払う、労務費転嫁指針を遵守する、といった具体的な行動が並んでいます。宣言はこれを守ると表明する行為です。つまり自社の取引条件を自分で縛る宣言であって、単なるPRの看板ではありません。
誰が宣言するのかについては、誤解がよくあります。ポータルサイトの説明は「『発注者』側の立場から、『代表権のある者の名前』で宣言するもの」となっており、大企業向けの制度だと読まれがちです。ところが同じポータルのFAQは、業種・規模を問わず宣言できると明記しています。委託先が少ない場合はもちろん、委託先が1社もない場合でも「今後、委託事業者との取引が発生した場合として」宣言できます。つまり「自社が発注する場面での姿勢を宣言する」制度であって、発注先が多いか少ないかは要件ではありません。宣言すると、企業名と代表者名を含む宣言文がポータルに公開されます。
2026年8月22日時点で、ポータルサイトの登録数は105,198社です。この数字はポータルのトップページで常時公開されていて、いま何社が宣言しているかをその場で確認できます。
2026年1月にひな形が変わった。既存の宣言企業は何をすればいいのか
2025年12月26日、経済産業省は「パートナーシップ構築宣言のひな形を改正します(令和8年1月1日改正)」を公表しました。宣言が遵守を約束している振興基準と、その根拠法が改正され、2026年1月1日に施行されたためです。
改正のポイントは3点あります。
| 改正点 | 内容 |
|---|---|
| サプライチェーンの深い層 | 振興基準前文が「サプライチェーンの深い層」も含めた共存共栄を謳うことになったため、ひな形もこの用語を使う形に改めた |
| 「振興基準」の遵守の書き方 | 従来は振興基準を一部抜粋・要約してひな形に直接書いていたため、「書いてある部分だけ守ればよい」という誤解が生じていた。振興基準全体を遵守する旨に単純化し、内容を理解したうえで宣言する旨の記述を追加した |
| 法改正に伴う用語の変更 | 「下請代金支払遅延等防止法」が「中小受託取引適正化法」に、「下請中小企業振興法」が「受託中小企業振興法」になるなど、「下請」等の用語を改めた |
あわせて、テレワーク導入やBCP策定の支援に関する記述が定型部分から外れました。制定当時は新型コロナウイルス禍の最中でしたが、状況が変わったため、各社が選んで書く個別項目のほうに移されています。
経済産業省は、宣言企業に対して「令和8年1月1日以降、新たなひな形に基づきパートナーシップ構築宣言を更新いただき、宣言内容を適切に履行してください」と求めています。更新は、ポータルの登録ページから初回登録と同じように必要情報を入力し、「更新」を選んで新しい宣言文のPDFをアップロードする手順です。宣言日付は、既存の宣言日の下に更新日を併記します(例:2021年10月10日/(2026年○月○日更新))。なお、更新すると宣言文のURLが変わります。名刺やウェブサイトに宣言文へのリンクを載せている場合は、貼り替えが必要です。
ひな形の更新だけでは終わらない。守る中身が2026年6月にもう一度変わった
ここが見落とされやすいところです。ひな形が変わったのは2026年1月ですが、宣言が遵守を約束している振興基準そのものが、2026年6月24日にさらに改正され、同日施行されています。中小企業庁が公表した改正の概要によれば、変わったのは次の3点です。
- 知的財産取引の適正化。2026年6月24日に公表された新しい指針に基づいて知財取引を行う旨を示し、その指針が問題となり得るとして掲げている行為を行わない旨を追記した
- 型等の無償保管への対応。「型等の保管に関する望ましくない事例」を明記し、無償保管の要請を行わないことを徹底する旨を規定。保管費用は保管期間に応じて支払う必要がある旨も明記された
- 価格転嫁の浸透を後押しする人事評価制度。適切な価格転嫁・取引適正化に取り組んだ調達部門等の担当者が正当に評価される人事評価制度の整備に努める旨が新設された
宣言文の様式は1月版のままで足りますが、守る内容は6月に更新されています。とくに型の無償保管については、中小企業庁が「取適法の勧告件数は増加傾向(令和7年度で24件)」と明記しており、実際に指摘が出ている論点です。金型や治具を取引先に預けっぱなしにしている会社は、宣言の前に一度、保管の実態と費用負担を確認しておいたほうがいいと思います。
宣言文には何を書くのか。2026年1月版ひな形の中身とよくある不備
ひな形は3部構成です。1と2は定型文がそのまま使えます。手を動かすのは、1の下にある個別項目と、3のその他(任意記載)です。
個別項目は次の6つから選び、項目ごとに取組内容を具体的に書きます。
| 記号 | 個別項目 | ひな形が挙げる例 |
|---|---|---|
| a | 企業間の連携 | オープンイノベーション、M&A等の事業承継支援、取引先のテレワーク導入支援 |
| b | IT実装支援 | 共通EDIの構築、データの相互利用、IT人材の育成支援、サイバーセキュリティ対策の助言・支援 |
| c | 専門人材マッチング | (例示なし) |
| d | グリーン化の取組 | 脱・低炭素化技術の共同開発、省エネ診断に係る助言・支援、生産工程等の脱・低炭素化、グリーン調達 |
| e | 健康経営に関する取組 | 健康経営に係るノウハウの提供、健康増進施策の共同実施 |
| f | BCP/事業継続 | 取引先の災害時等の事業継続計画策定の助言 |
どれを選ぶかは自由ですが、実利に直結する場合があります。国土交通省のモーダルシフト等推進事業と環境省のScope3排出量削減の補助事業は、単に宣言しているだけでなく「グリーン化の取組について宣言している事業者」であることを加点の要件にしています。脱炭素系の補助金を視野に入れているなら、dを選んで具体的に書いておく意味があります。
3のその他(任意記載)は、独自の取組がなければ削除して構いません。ひな形には、直接の取引先の更に先まで価格転嫁が可能となる価格決定を行う、約束手形の利用廃止に向けて現金払いや電子記録債権への移行に取り組む、といった例文が載っています。
登録でつまずくのは、たいてい書式の不備です
ポータルサイトの登録方法ページには「よくある間違い」が明記されています。PDFに変換する前に確認しておきたい点です。
- ひな形に赤文字で書かれている箇所(タイトルの「のひな形」、文中の説明文、(例)など)はすべて削除する
- 企業名・役職・氏名・宣言日付は必ずワード等で入力する。手書きは不可
- 役職名は代表権を有する者のものを必ず入れる
- 個人事業主の場合、氏名のみは不可。必ず屋号と役職名(代表、院長など)を入力する
署名を手書きして押印したPDFを作ってしまう方がいます。書類仕事としては自然な発想なのですが、この制度では修正依頼になります。
登録してからポータルに載るまで、何日かかるのか
ポータルサイトのFAQと登録方法ページは、同じ内容を二か所に書いています。通常、登録内容についての修正依頼事項がない場合、登録した日の約10日後に宣言文がポータルサイトにアップロードされる。そして、補助金等の申請に関連して登録申請が多数集中する時期には、さらに数日を要する場合がある。そう書かれています。
掲載されたことの通知は届きません。自分でポータルの登録企業リストを見に行って確認する運用です。ここは意外と知られていません。
つまり実務上は、次の3つを足して考える必要があります。
- 社内で宣言文を作り、代表者の決裁を取るまでの日数
- 登録から掲載までの約10日
- 修正依頼が来た場合の往復と、申請集中期の上乗せ
私が補助金の初回面談でよく申し上げるのは、加点は申請するしないにかかわらず先に取っておいたほうがいい、ということです。事業継続力強化計画のように審査の標準処理期間が約45日のものもありますし、この宣言も掲載まで10日前後かかります。本当に申請するかどうかを決めるより前に、取れるものは先に取っておく。少し面倒ですが、締切間際に「間に合わなかった」となるより、ずっといい。
補助金の加点は、いつ時点で判定されるのか
ここが逆算の要になります。「掲載されていること」を判定する基準時点が、補助金ごとに違います。ポータルサイトの「宣言するメリット」ページに、制度ごとの注記として書かれています。
| 補助金 | 宣言の判定基準時点 |
|---|---|
| ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 | 応募締切日前日時点 |
| 中小企業新事業進出補助金 | 応募締切日時点 |
| 伝統的工芸品産業振興補助金 | 事業計画書提出時点 |
| 皮革産業振興対策事業費補助金 | 申請時点 |
| 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金 | 申請時点 |
| 再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業 | 審査時点 |
ものづくり補助金は実際の公募要領でも確認できます。第23次締切の公募要領は、加点項目の2番目にパートナーシップ構築宣言を挙げ、「『パートナーシップ構築宣言ポータルサイト』において宣言を公表している事業者(応募締切日前日時点)」と書いています。同じ公募要領で、経営革新計画やDX認定や事業継続力強化計画は「申請締切日時点で有効な」という書き方です。宣言だけが「前日」なのです。
1日の違いに見えますが、逆算すると効いてきます。掲載まで約10日、申請集中期はさらに数日。締切当日に掲載されても、ものづくり補助金では加点になりません。締切から数えて2週間から3週間前には登録を済ませておく、というのが安全側の目安です。同じ公募要領によれば加点は最大6項目まで申請でき、審査の結果、各要件に合致した場合のみ加点されます。加点をどこまで積むかで採択の見え方は変わってきますので、新事業進出補助金・ものづくり補助金の加点項目の全体像とあわせて設計すると無駄がありません。
なお、加点の扱いが少し違う制度もあります。中小企業成長加速化補助金は加点項目という形ではなく、「審査上もパートナーシップ構築宣言を行っていることが重要な考慮要素の一つとされている」という書き方です。国土交通省の中小物流事業者の労働生産性向上事業に至っては、加点ではなく補助上限台数の増加という形の優遇になっています。
公募回によって基準時点も加点項目も変わります。ここに挙げた時点は2026年8月22日時点でポータルサイトと公募要領に記載されているものです。実際の申請では、必ずその回の公募要領でご確認ください。締切から逆算した準備の順番でお悩みでしたら、補助金のご支援のページから初回無料相談をご利用ください。