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経営力向上計画とは|メリット・申請の流れと「60日ルール」の落とし穴【2026年】

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池田計画合同会社

公開日:2026年7月14日/更新日:2026年9月14日 執筆:池田哲郎(中小企業診断士・認定経営革新等支援機関/池田計画合同会社 代表)

「設備を入れるなら経営力向上計画を出しておくといい、と税理士さんに言われた」。設備投資のご相談をいただくと、この話がよく出てきます。ところが中身を聞いてみると、名前だけ知っていて、何が得なのか、いつまでに出せばいいのかは分からないまま止まっている。そういう社長さんが本当に多い制度です。

結論から言えば、経営力向上計画とは、人材育成や設備投資などで自社の経営力を高める取組をまとめ、国の認定を受ける計画のことです。認定されると税制措置・金融支援・法的支援が受けられます。根拠法は中小企業等経営強化法で、認定するのは事業分野ごとの主務大臣です(本記事は2026年9月時点の中小企業庁・日本政策金融公庫の公表資料と各補助金の公募要領に基づきます。数値・期限は必ず最新の公式資料でご確認ください)。

私は元銀行員として法人融資の審査に長く携わったあと、中小企業診断士として独立し、認定経営革新等支援機関として設備投資や補助金のご相談を受けています。その経験から先にお伝えしておきたいことがあります。この制度でいちばん多い失敗は、計画の中身ではなく「順番」を間違えることです。設備を買ってから相談に来られると、もう手遅れになっている場合があります。この記事では、制度の中身と合わせて、その順番の話を実務レベルで書きます。


経営力向上計画とは何か?

経営力向上計画は、人材育成、コスト管理、財務管理、設備投資といった取組で自社の経営力を底上げする計画を作り、国の認定を受ける制度です。中小企業庁は「人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画」と説明しています。

認定を受けられるのは、中小企業等経営強化法第2条第6項の「特定事業者等」です。会社だけでなく個人事業主も対象で、常時使用する従業員数が2,000人以下であることが基本の線引きになります(法人形態によって扱いが異なるため、詳細は中小企業庁の手引きをご確認ください)。

計画に書く期間は、計画開始の月から起算して3年(36か月)・4年(48か月)・5年(60か月)のいずれかを選びます。分量としては、企業の概要、現状認識、経営力向上の目標、実施事項などを所定の様式に記入する形で、補助金の事業計画書のような長文を書かされるものではありません。

項目内容
根拠法中小企業等経営強化法
対象特定事業者等(常時使用する従業員数2,000人以下が基本。個人事業主も可)
認定する人事業分野ごとの主務大臣(提出先が業種で変わります)
計画期間3年・4年・5年のいずれか
受けられる支援税制措置・金融支援・法的支援(+補助金での優先採択)

計画は「事業分野別指針」(自社の業種に指針がなければ「基本方針」)を踏まえて作ります。目標として使う代表的な指標が労働生産性で、計画期間に応じた伸び率を書き込みます。

認定を受けると、何が得られるのか?

中小企業庁は支援措置を3種類に整理しています。設備投資で使われるのは、ほぼ税制措置です。

支援措置中身
税制措置認定計画に基づいて取得した一定の設備について、法人税の即時償却、または取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)の税額控除を選べます(中小企業経営強化税制)
金融支援日本政策金融公庫の融資、民間金融機関の融資に対する信用保証の別枠、債務保証など
法的支援業法上の許認可の承継の特例、組合の発起人数の特例など

これに加えて、中小企業庁の手引きは認定のメリットとして「認定事業者に対する補助金における優先採択」を挙げています。実際、補助金の公募要領で加点項目に置かれることがあります(どの補助金で加点になるかは公募回ごとに変わるため、必ずその回の公募要領でご確認ください)。

税制措置について、実務でよく効くのは即時償却のほうです。設備の取得価額を初年度に全額損金にできるので、利益が出ている年度に設備を入れるなら効果が大きい。ただし税額控除には上限があり、中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制の控除額の合計で、その事業年度の法人税額の20%までと決まっています(超えた分は翌事業年度に繰り越せます)。

金融支援は、正直なところ「これ目当てで認定を取る」というものではありません。信用保証の別枠が使えるといっても、保証枠に余裕がある会社にはあまり意味がない。ただ、事業承継や大きな設備投資で資金調達額が張るときには、選択肢として頭の隅に置いておく価値はあります。補助金の加点と、融資・保証の中身は、記事の後半で具体的に書きます。

「認定率は何%ですか」という質問が成り立たない理由

ご相談の場で必ず聞かれるのが「これ、採択率はどれくらいなんですか」です。補助金の話と地続きで聞こえるので当然の疑問なのですが、経営力向上計画は、応募者を競わせて上位を選ぶ制度ではありません。法律の要件に適合した計画であれば認定される、いわば申請型の制度です。だから「採択率○%」という数字がそもそも存在しません。

ここは補助金とはっきり違うところです。補助金は公募回ごとに予算があり、審査員が点数を付けて上から採択していきます。落ちる人が必ずいる。一方で経営力向上計画は、事業分野別指針に沿って、目標と実施事項が筋の通った形で書かれていれば通ります。書類に不備があれば補正を求められる、という性質のものです。

だから力の入れどころが変わります。補助金の事業計画は「他社より優れていること」を書く文章ですが、経営力向上計画で問われるのは「要件を満たしているか」と「手続きの順番が正しいか」です。私の経験では、この制度でつまずく方の理由はほぼ後者に集中しています。

設備を先に買ってしまった場合、「60日以内」ルールで間に合うのか?

原則は「認定を受けてから設備を取得する」です。中小企業庁のQ&Aも、工業会証明書(A類型)または経済産業大臣の確認書(B・D・E類型)を取得したうえで法の認定を受け、そのあとに対象設備を取得するのが「原則の流れ」だとはっきり書いています。

とはいえ現実には、いい機械が出たので押さえた、納期の都合で先に契約した、という順番はいくらでも起こります。そのための例外措置が、いわゆる60日ルールです。

公式の言い方は「申請書到達日から遡って60日以内に設備を取得する必要があります」。裏返せば、設備を取得した日から60日以内に、計画申請書が行政庁に到達していなければなりません。計画変更で設備を追加する場合も同じ扱いです。なお、ここでいう設備の取得日は設備の引き渡しを受けた日を指します。契約日でも発注日でもないので、そこは押さえておいてください。

ここで多くの解説記事が「取得日から60日以内に申請すればセーフ」と書いて終わっています。実務では、そこがいちばん危ない。中小企業庁の手引きを図の注釈まで読むと、関門は4つあるからです。

  • 関門1:設備取得日から60日以内に、計画申請書が行政庁に到達していること
  • 関門2:その設備を取得して事業の用に供した事業年度内に、認定まで受けていること(当該事業年度を超えて認定を受けた場合、税制の適用は受けられません)
  • 関門3:A・B類型の証明書・確認書の申請が、設備取得より前に行われていること
  • 関門4:証明書・確認書の日付が、経営力向上計画の申請日以前であること

関門3と関門4は、手引きの図に小さな注釈として添えられているだけなので、ほとんどの解説記事が拾っていません。ところが実務で効いてくるのはむしろこちらです。60日はカレンダーを見れば分かりますし、気づいた時点でまだ手が打てる。一方で「証明書をメーカーに頼んだのが引き渡しの後だった」は、あとから直しようがありません。設備を押さえた時点で証明書の依頼まで出していたかどうかが、実質的な分かれ目になります。

認定には標準処理期間として約30日かかります。決算日の直前に設備を入れて、あわてて60日以内に申請書を出したとしても、認定が翌期にずれ込めばアウトです。60日という数字だけを覚えていると、関門2で足をすくわれます。

さらに、D類型とE類型では、そもそもこの例外措置が使えません(認定後に設備を取得する必要があります)。

順番税制の適用注意点
認定 → 設備取得(原則)○証明書・確認書の取得にも時間がかかるため、逆算して動く
設備取得 → 60日以内に申請到達 → 同一事業年度内に認定○(例外措置)A・B類型のみ。決算日との距離を必ず確認する
設備取得 → 60日以内に申請 → 認定が翌事業年度に×60日を守っても適用不可(関門2)
設備取得から61日以上経ってから申請×取り返しがつかない
証明書の発行依頼が、設備の引き渡しより後×60日を守っていても不可(関門3)
証明書・確認書の日付が、計画の申請日より後×60日を守っていても不可(関門4)
D類型・E類型で先に設備取得×例外措置の対象外

細かい話ですが、紙で申請する場合、設備取得日から起算して60日目が閉庁日にあたるときは、翌開庁日に到達すれば審査が開始されます。土日をはさんで1日足りない、というときに使える逃げ道はここだけです。

設備投資の相談で私が最初に聞くのは、機械の話ではなく「御社の決算月はいつですか」と「発注はもう出しましたか」です。順序を先に押さえないと、あとの話が全部ひっくり返るからです。

工業会証明書が間に合わないときはどうするか?

決算月と発注状況の次に確認するのが、証明書です。A類型で必要になる工業会等の証明書について、中小企業庁は「証明書は申請してから発行されるまで数日〜2ヶ月程度かかるため、事前に工業会等にご確認ください」と案内しています。ここを「だいたい2週間くらい」と見積もっていると、逆算が丸ごと狂います。

これだけ幅がある理由は、手続きの経路にあります。設備ユーザーは工業会に直接申請できません。間に設備メーカーが入ります。

  1. 設備ユーザーが、設備メーカー等に証明書の発行を依頼する(計画の申請前に行う必要があります)
  2. 依頼を受けたメーカーが、証明書(様式1)とチェックシート(様式2)に記入し、担当する工業会等に確認を求める
  3. 工業会等がメーカーから裏付け資料を取り寄せて内容を確認し、上席者の確認を経て、メーカーに証明書を発行する
  4. メーカーが、依頼のあった設備ユーザーに証明書を転送する

自社で急かせるのは1番目だけで、あとはメーカーと工業会の作業です。しかも中小企業庁のQ&Aによれば、証明書の申請日はメーカーが工業会へ発行を依頼した日で、様式1の中段右側にメーカーが記載します。関門3(申請が設備取得より前か)を判定するのはこの日付です。自分がメーカーにメールした日ではありません。

そのうえで、発行を早められる可能性がある手立てがひとつだけあります。中小企業庁の手引きは、過去(2025年4月以降に限る)に同じ設備について証明書を交付していて、その資料を工業会等が保管している場合は、裏付け資料の取り寄せが不要としています。つまり同じ型式で最近の発行実績があれば、その分だけ早く出てくる見込みがあるということです。私がメーカーの営業担当にまず聞くのはここで、「この型式、2025年4月以降に証明書を出したことはありますか」と確認します。あるなら、逆算の見通しはかなり立てやすくなります。

逆に、期待しないほうがいい方向もあります。手引きには「エビデンスが確認できていない状態で証明書を発行しないように」と書かれていて、メーカーが根拠資料の提出や合理的な説明をできない場合は証明書は発行されません。「メーカーさんは出せると言っていたのに出てこない」というご相談の正体は、たいていここです。生産性が年平均1%以上向上することを示す材料がメーカー側に揃っていない、という状態を、待っていても解消しません。

もうひとつ、知っておくと使えるのが証明書の有効範囲です。Q&Aでは、同一年内の取得であれば1枚の証明書で対応でき、翌年に取得する設備には別の証明書が必要とされています(販売開始要件の前提となる取得時期が変わるため)。裏を返せば、翌年に入れる予定の設備の証明書を、前の年のうちに取っておくこともできるということです。B類型で使う経済産業局の確認書のほうは、繁忙期でも1か月以内が目処とされています。

決算日から逆算すると、いつまでに動けばいいのか?

文章で書くと分かりにくいので、3月決算の会社が2月10日に機械の引き渡しを受けた、という前提で並べてみます。すでに設備を取得してしまった、例外措置のケースです。

期限日付(例)根拠
証明書の発行依頼(メーカーが工業会へ)2月10日より前関門3。数日〜2か月かかるため、実際には前年12月〜1月に動きたい
設備の引き渡し=取得日2月10日契約日・発注日ではない
証明書の日付計画の申請日以前関門4
計画申請書の到達期限(60日)4月11日関門1
事業年度末3月31日関門2。この日までに認定まで終わっている必要がある
認定の標準処理期間電子14日(休日等を除く)/紙30日3月31日から逆算する
実質的な申請到達の期限3月上旬(電子)/2月末(紙)年度末までに認定が下りる線

この表でお伝えしたいのは1点だけです。60日の期限(4月11日)より、事業年度末から逆算した期限(3月上旬)のほうが先に来ます。「まだ60日あるから大丈夫」と思っていると、実際にはとっくに手遅れになっている。決算が近い時期の設備投資でご相談が来たとき、私が最初にカレンダーを開くのはこのためです。

設備工事を手がける県内の会社とお話ししていたときも、結局は同じ整理に落ち着きました。制度の側の日程は動かせないので、動かせるほうを動かす。納期の長い設備と短い設備を分けて、長いほうから先に手を付ける。書類が揃うのを待ってから動き出すと、たいてい一周遅れます。

どうしても間に合わなかった設備は、もう打つ手がないのか?

正直にお伝えすると、経営力向上計画の側では打つ手がありません。61日目に気づいた設備を救う規定はありません。

ただ、税制の話としては終わりではありません。中小企業庁のQ&Aは、手続きの要件や時間の制約で本税制が使えない場合でも、中小企業投資促進税制が適用できる場合があると案内しています。こちらは経営力向上計画の認定を必要としない制度で、国税庁の説明では機械装置は160万円以上が対象、措置の内容は取得価額の30%の特別償却、または7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等に限られます)です。適用期限は令和9年3月31日までとされています。

即時償却ほどのインパクトはありませんし、対象になる設備の範囲も違います。それでも「全部パーになった」と思い込んで何もしないよりは、顧問税理士に一度当ててみる価値はあります。私がご相談を受けるときも、間に合わなかった案件はこちらに切り替えられないかを先に確認します。制度が使えないと分かった時点で、次の手を探すほうに頭を切り替えたほうが早い。補助金でも同じで、タイミングが合わない案件を無理に合わせにいくより、目的に合う別の手段を探したほうが結果的に着地します。

なお、設備を取得する前の段階でこの記事を読んでいる方は、まだ全部の選択肢が残っています。発注前であれば原則どおりの順番で進められますので、初回無料の経営相談で決算月とスケジュールだけでも整理しておくと、あとが楽になります。設備の節税そのものの中身は中小企業経営強化税制の解説にまとめています。

どの類型で申請すればいいのか?

中小企業経営強化税制の類型は、A・B・D・Eの4つです(かつてあったC類型は現在の手引きには置かれていません)。設備の性格と、どこから証明書をもらうかで分かれます。

類型設備の性格要件のイメージ証明・確認
A類型生産性向上設備生産性が年平均1%以上向上する設備工業会等の証明書
B類型収益力強化設備年平均の投資利益率が7%以上となるパッケージ投資経済産業局の確認書
D類型経営資源集約化に資する設備事業承継等を伴う投資(修正ROA等で判定)経済産業局の確認書
E類型経営規模拡大設備等建物も対象になる拡大投資経済産業局の確認書

いちばん使われるのはA類型です。メーカーに「この機械、経営力向上計画の証明書は出ますか」と聞けば、たいてい話が通じます。証明書の発行にも時間がかかるので、設備を選ぶ段階で聞いておくのが安全です。

対象になる設備には金額の下限があり、A類型ではあわせて販売開始からの年数も要件になります。この年数が設備の種類ごとに違うところは、意外と見落とされます。

設備の種類最低価額販売開始時期(A類型)
機械装置160万円以上10年以内
工具(測定工具及び検査工具)40万円以上5年以内
器具備品40万円以上6年以内
建物附属設備60万円以上14年以内
ソフトウエア70万円以上5年以内

資産の区分を取り違えると、価額の判定も販売開始時期の判定もまとめてずれます。「機械装置のつもりが器具備品だった」というのは、税務側で指摘されて初めて分かることが多い。区分の判断は顧問税理士や所轄の税務署にご確認ください。

なお、税制措置を使えるのは指定事業に限られます。製造業・建設業・小売業・宿泊業・情報通信業など幅広く入っていますが、電気業、水道業、鉄道業、銀行業、映画業を除く娯楽業などは対象外です。設備の取得時期も、平成29年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの指定期間内である必要があります。

どこに、どうやって出すのか?

提出先は事業分野ごとの主務大臣です。ここが補助金と大きく違う点で、業種によって出す先の省庁が変わります。製造業なら経済産業局、建設業なら国土交通省というように分かれるので、まず日本標準産業分類で自社の事業分野を確認し、中小企業庁のサイトにある「事業分野と提出先」で出し先を調べるのが最初の作業になります。

申請は「経営力向上計画申請プラットフォーム」からの電子申請が基本です。GビズIDを使います。標準処理期間は次のとおりです。

  • 紙・通常の申請:約30日(所管する省庁が単一の場合。複数省庁にまたがる場合は約45日)
  • プラットフォームからの電子申請(経済産業部局宛てのみ):約14日(休日等を除く)

不動産取得税の軽減措置や許認可承継の特例を使う場合は、関係行政機関での評価・判断が加わるため、さらに日数がかかります。認定が下りると、主務大臣から計画認定書と計画申請書の写しが交付されます。

実務としては、この「約30日」を甘く見ないことです。証明書のほうは数日〜2か月程度、認定に約1か月。単純に足すと、早ければ1か月強、遅いケースでは3か月かかる計算になります。だいたいこのくらい、と一つの数字で覚えないほうがいい部分です。型式と工業会によって本当に差が出ます。

補助金や固定資産税とは、どう組み合わせるのか?

設備投資では補助金と併用したくなりますが、税制との関係で見落としがちな点があります。中小企業庁のQ&Aは、国や地方公共団体から補助金を受けて設備を取得した場合、税務上の取得価額は補助金額等を差し引いた価額になると説明しています(圧縮記帳の適用を受けた場合は圧縮記帳後の金額)。補助金が翌事業年度の交付になる場合は、予定交付額を差し引いた価額が税額控除の対象になります。

つまり「1,000万円の機械に500万円の補助金が出た」なら、即時償却や税額控除の計算の土台になるのは1,000万円ではありません。節税額を先に見込んで資金繰りを組むと、あとで数字が合わなくなります。加えて、補助金の側で税制との併用を制限している場合があります。これも中小企業庁が注意喚起している点なので、その補助金の公募要領を確認してください。

もうひとつ、よくある混同が固定資産税です。設備の固定資産税を軽くしたい場合、使う制度は経営力向上計画ではなく「先端設備等導入計画」です。こちらは市町村が認定する別の制度で、認定支援機関の確認が必要になります。名前が似ていて、どちらも設備投資の計画なので混ざりやすいのですが、認定する主体も、得られるものも違います。法人税を軽くしたいのか、固定資産税を軽くしたいのかで、出す先が変わると考えてください。

補助金そのものを検討中なら、山梨県の中小企業が使える補助金一覧で使える制度を先に見ておくと、設備投資全体の組み立てがしやすくなります。設備系ではものづくり補助金や新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が候補になります。

経営力向上計画の認定で、補助金の加点はつくのか?

2026年9月時点で公募要領の原文を確認した下の表の補助金のうち、経営力向上計画の認定が加点になるのは小規模事業者持続化補助金と事業承継・M&A補助金でした。設備投資でよく使う省力化投資補助金〈一般型〉、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、デジタル化・AI導入補助金(通常枠)の加点項目には入っていません。ここに挙げていない補助金や枠は、その回の公募要領で確認してください。「経営力向上計画を取っておけば補助金の加点になる」という説明は、どの補助金に出すかによって正しくも誤りにもなります。

補助金(確認した公募回・版)加点になるか条件・注意点
小規模事業者持続化補助金〈一般型 通常枠〉第20回(公募要領 第8版)なる(政策加点「経営力向上計画加点」)回ごとの基準日までに認定を受け、認定書の写しを提出。認定申請中は対象外
小規模事業者持続化補助金〈創業型〉第4回(公募要領 第8版)なる(政策加点)一般型と同じ条件
事業承継・M&A補助金 16次(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠)なる公募申請時に有効な期間の認定。経営革新計画の承認、先端設備等導入計画の認定と同じ1つの加点事由。廃業・再チャレンジ枠には無い
中小企業省力化投資補助金〈一般型〉第8回ならない加点10項目に無し。事業継続力強化計画は加点あり
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回(公募要領 1.2版)ならない加点17項目に無し。経営革新計画と事業継続力強化計画は加点あり
デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)ならない加点項目に無し

省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領にも「経営力向上計画」という言葉は出てきますが、どちらもNPO法人が申請する場合の要件としてです。加点とは関係がないので、読み違えないようにしてください。

持続化補助金で経営力向上計画加点を使うとき、何に気をつけるか?

いちばん見落とされやすいのは、選べる加点の数です。第20回の公募要領は、加点を【重点政策加点】と【政策加点】からそれぞれ1種類、合計2種類までとしています。経営力向上計画加点は【政策加点】の中にあり、同じ【政策加点】には賃金引上げ加点や事業継続力強化計画策定加点も並んでいます。つまり賃上げ加点を取りにいくなら、経営力向上計画加点は使えない。同じ区分から2種類以上を選ぶと加点審査の対象外になる、とまで書かれています。

もうひとつは日付です。認定を受けていなければならないのは申請日ではなく、回ごとに別紙「参考資料」で示される「基準日」までです。経営力向上計画は標準処理期間が約30日(経済産業部局宛てを電子申請した場合は約14日)かかるので、締切が見えてから動くと間に合いません。基準日の確認と認定申請は、申請書を書き始める前に済ませておく順番になります。持続化補助金の全体像は小規模事業者持続化補助金(山梨)の解説にまとめています。

設備投資の補助金で加点を取りたいなら、何を取ればいいのか?

表のとおり、省力化投資補助金にも新事業進出・ものづくり商業サービス補助金にも入っていて、持続化補助金にもあるのは事業継続力強化計画です。設備の補助金を狙う段階なら、加点のためにまず取りにいくのは経営力向上計画ではなくこちらです。経営力向上計画は、設備の税制措置(即時償却・税額控除)を受けるために取るものと割り切ったほうが、判断を誤りません。新しい事業に踏み出す計画なら、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金で加点になる経営革新計画も候補に入ります。

補助金のご相談では、最初に「加点項目はできるだけ取りましょう。採択が大きく変わります」とお話ししています。ただ、どの加点を取るかは補助金ごとに違い、準備にかかる期間もばらばらです。そこで初回の打ち合わせで直近の決算書をお預かりし、賃上げ加点を取りにいけるかを試算したうえで、どの計画から手をつけるかの順番を決めるようにしています。「経営力向上計画を取れば加点になるらしい」という話だけで動き出すと、狙う補助金では加点にならなかった、ということが起こり得ます。

資金調達にはどう使えるのか?公庫の融資と保証の別枠を元銀行員が読む

経営力向上計画の金融支援で、山梨の中小企業が現実に使う可能性があるのは日本政策金融公庫の融資と信用保証の別枠の2つです。中小企業庁の「税制措置・金融支援活用の手引き」(令和8年4月1日版)には7種類の金融支援が並んでいますが、残りは資本金3億円超の会社向けの投資、海外子会社の資金調達、食品製造業者等向けの債務保証など、対象がかなり限られます。

日本政策金融公庫では、どの融資の対象になるのか?

国民生活事業の場合、経営力向上計画の認定を受けた方は「新事業活動促進資金」の対象者に入っています。解説記事によっては別の資金名で紹介されていることがありますが、2026年9月に公庫の資金ページで確認した名称はこちらです。

項目新事業活動促進資金(国民生活事業)で経営力向上計画の認定を受けた方の条件
資金のお使いみちその事業を行うために必要な設備資金・運転資金
融資限度額7,200万円(中小企業庁の手引きでは、うち運転資金4,800万円)
利率基準利率。ただし設備資金は特別利率B(土地にかかる資金は基準利率)
返済期間設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間2年以内)
担保・保証人相談して決める(経営者保証免除特例制度などと併用できる場合あり)

注意したいのは、利率が下がるのは設備資金だけという点です。運転資金は基準利率のままなので、「認定を取れば借入全体の金利が下がる」わけではありません。なお中小企業庁の手引きでは長期運転資金を「7年以内」と書いており、公庫のページ(10年以内)と表記が揃っていません。申込みの時点で公庫に条件を確認してください。中小企業事業(比較的規模の大きい会社向け)では、手引き上の貸付限度額は14億4,000万円です。

信用保証の「別枠」は、どんな計画でも使えるのか?

使えません。私が確認した上位の解説記事では、この条件に触れているものがありませんでした。手引きは、民間金融機関の融資で別枠の保証を受けられるのは、経営力向上計画の実行のうち「新商品・新サービスなど自社にとって新しい取組(新事業活動)」と「M&A等による事業承継」に限ると明記しています。既存の機械を新しい型式に入れ替えるだけの計画は、税制措置は受けられても、保証の別枠の対象にはならないと読むのが自然です。

保険の種類通常枠経営力向上計画による別枠
普通保険2億円(組合4億円)2億円(組合4億円)
無担保保険8,000万円8,000万円
特別小口保険2,000万円2,000万円
新事業開拓保険2億円→3億円(保証枠の拡大)
海外投資関係保険2億円→3億円(保証枠の拡大)

加えて、事業承継等に必要な資金の保証では、一定の財務要件を満たすことの認定を受け、保証申込み直前の決算でも要件を満たしていれば、経営者保証が不要になる扱いがあります。事業承継を控えた会社にとっては、別枠よりこちらのほうが意味を持つことがあります。保証協会の審査そのものの見られ方は信用保証協会の審査の解説にまとめています。

認定を取れば、融資は通りやすくなるのか?

ここは融資審査の側にいた人間として、はっきり書いておきます。認定と融資審査は別物です。手引き自身が「金融機関及び信用保証協会の融資・保証の審査は、担当省庁による経営力向上計画の認定審査とは別に行います。認定を取得しても融資・保証を受けられない場合があります」と注意書きを置いています。

認定の審査は、様式の記載が制度の要件を満たしているかを確かめるものです。一方で金融機関が見るのは返済できるかどうかで、見ている場所がまったく違います。支援の現場でも、行政の認定に出す計画書は要件チェックが通れば足り、精度をかけるべきは金融機関に出す数字のほう、という配分をお勧めしています。経営力向上計画の申請書には「経営力向上を実施するために必要な資金の額及びその調達方法」を書く欄があり、自己資金・融資・補助金・リースなどを記載します。ここに書いた融資額と、銀行に出す資金繰り表や借入申込みの金額が食い違っていると、審査する側は必ずその理由を聞きます。同じ数字で説明できるように揃えておいてください。

もうひとつ、順番の話です。手引きは、金融支援の活用を検討している場合は計画を提出する前に公庫や信用保証協会などの関係機関に相談するよう案内しています。認定書を持って銀行に行くのではなく、計画を出す前に「この設備資金を経営力向上計画の認定で借りたい」と伝えておく。担当者によっては手続きが増える制度を積極的には勧めてこないこともあるので、使える制度はこちらから名前を挙げて確認するほうが確実です。融資の相談先の選び方は融資の相談先6つの違い、保証協会付き融資の仕組みは制度融資の解説も参考にしてください。

補助金を出すと決めていなくても、認定だけ先に取っておく

最後に、私が実際にお客様へ提案している使い方をひとつ。

設備投資を考えているが補助金に出すかどうかは決めきれない、という段階の社長さんは多い。そういうとき私は「申請するしないにしろ、取れるものは先に取っておきませんか」とお話しします。加点や認定の類は、あとから慌てて取ろうとしても間に合わないものが多いからです。経営力向上計画も、認定まで1か月前後かかる。設備の話が具体化してから動き始めると、たいてい間に合いません。

先に認定を取っておけば、持続化補助金や事業承継・M&A補助金に出すことになったときに加点の対象になり、補助金に出さないことにしても即時償却や税額控除は使える。設備を入れる意思が固まっているなら、取っておいて損はしない性質のものです。手続きは正直なところ面倒ですが、面倒な順番を守るかどうかで税金が変わってしまう。それがこの制度の本質だと思っています。

逆に、無理をしてまで使うものではありません。設備を入れる予定がないのに認定だけ取っても、労力に見合いません。設備投資の予定があり、決算日まで余裕があり、利益が出ている。この3つが揃っているなら、検討する価値があります。


池田計画合同会社は、山梨県を拠点とする認定経営革新等支援機関です。代表の池田は、八十二銀行で法人融資の審査に長く携わったのち、中小企業診断士として独立しました。設備投資の順番の設計、経営力向上計画や補助金の使い分け、金融機関への説明まで、審査する側にいた視点でご支援しています。「うちの設備は対象になるのか」「先に発注してしまったが間に合うか」という段階でも構いません。AI補助金診断・補助金支援サービスや認定経営革新等支援機関の解説をご覧いただくか、初回無料の経営相談からお気軽にご連絡ください。


よくある質問

経営力向上計画と経営革新計画は何が違いますか?

目的と認定する主体が違います。経営力向上計画は、人材育成やコスト管理、設備投資などで既存事業の経営力を底上げする計画で、国(事業分野別の主務大臣)が認定します。経営革新計画は、新商品・新サービス・新分野など新たな取組で経営の向上を図る計画で、都道府県(または国)が承認します(中小企業基盤整備機構)。目的が合えば両方を申請することもできます。

認定を受けたあとに設備を追加したくなった場合はどうすればいいですか?

中小企業等経営強化法第18条第1項に基づいて経営力向上計画を変更し、変更認定を受けることで、追加した設備についても税制措置を受けられます。変更認定の際も、追加する設備を計画に記載する必要があります。なお、計画変更で設備を追加する場合も、設備を先に取得したときの60日の扱いは同じです。

変更申請が必要になるケースや実施期間の延長は、経営力向上計画の変更申請の解説で詳しく書いています。

認定後に報告や実績報告は必要ですか?

類型によって異なります。B類型では投資計画に関する実施状況報告、D類型では事業の承継に関する報告が求められます。また、所得拡大促進税制の上乗せ措置を使う場合には「経営力向上報告書」の提出が必要です。補助金のような一律の実績報告・精算の手続きがある制度ではありません。

認定書を紛失してしまいました。再発行できますか?

認定書は計画を認定した主務大臣(提出先の行政機関)から交付されるものです。紛失時の取り扱いは提出先によって異なるため、申請した行政機関の窓口に問い合わせてください。税制の適用時には認定書とその申請書の写しを税務申告書に添付するため、原本は必ず保管しておいてください。

個人事業主でも申請できますか?

できます。経営力向上計画の対象となる「特定事業者等」には、常時使用する従業員数が2,000人以下の個人事業主も含まれます。ただし中小企業経営強化税制の適用にあたっては、税制側で別に定められた中小企業者等の要件(常時使用する従業員数1,000人以下の個人など)を満たす必要があります。

「認定を受けてから60日以内に設備を取得すればいい」という理解で合っていますか?

逆になっています。60日は認定日からではなく、設備の取得日を起点に数えます。中小企業庁の表現では「申請書到達日から遡って60日以内に設備を取得する必要がある」で、すでに取得してしまった設備を救うための例外措置です。認定を先に受ける原則のルートでは、認定後の取得に60日という期限はかかりません(指定期間内かつ計画の実施期間内であることは必要です)。この取り違えは実務でも本当によく見かけます。

同じ設備を来年も導入する予定です。工業会証明書は1枚で足りますか?

足りません。中小企業庁のQ&Aでは、同一年内の取得であれば1枚の証明書で対応できるものの、翌年に取得する設備については別の証明書を取得するよう案内されています。販売開始要件の前提になる取得時期が年をまたぐと変わるためです。なお翌年取得分の証明書を前の年のうちに取得しておくことは可能とされているので、複数年にわたる設備計画があるなら、まとめて依頼のタイミングを相談しておくとスケジュールに余裕が出ます。また、経営力向上計画側でも取得時期が異なる設備は行を分けて記載します。

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